はじめに

PS5のディスク版、2028年から新作は出なくなるって本当?
署名31万件の大炎上なのに、なぜか株価は上がってる。一体何が起きているのか整理してみました。
2026年7月1日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が「PlayStationコンソール向け新作ゲームのディスク生産を2028年1月に終了する」と発表しました。
SNSは大荒れ、撤回を求める署名は31万件超え(7月15日時点)。ここ数年のゲーム業界でもトップクラスの炎上になっています。
ただ、この件は「何が廃止されて、何が廃止されないのか」が誤解されがちなので、まず正確に整理させてください。
- 対象は2028年1月以降に発売される新作ゲームのみ
- すでに発売済みのタイトルや、2028年1月より前にディスク版として発売されるタイトルには影響なし(SIE公式発表の明記事項です)
- つまり、手持ちのディスクが遊べなくなるわけではないですし、既存タイトルの中古市場が直ちになくなるわけでもありません
「PS5のディスクが全部使えなくなる」みたいな話ではないんです。それでもこれだけ燃えているのには、ちゃんと理由があります。

この記事では炎上の経緯と両者の言い分を整理した上で、ソニー株ホルダーとしてニュース発表後にウォッチしていたソニーの株価の話、そしてゲームを2,260本以上遊んできた一人のヘビーゲーマーとしての僕の正直な気持ちを書いていきます。
炎上の経緯を時系列で整理
発表からの約10日間を振り返ると、こんな流れでした。
- 7月1日:SIEが公式ブログで発表。理由は「デジタルメディアへの需要が物理ディスクを大きく上回っている」こと
- 7月1日〜2日:X上で抗議ハッシュタグ「#NoDiscNOBUY」が拡散。海外PS公式Xの発表投稿にはリプライが10万件超。カナダのゲーム小売店PNP GamesがChange.orgで撤回署名を開始し、72時間で7.6万件を集める
- 7月6日:小島秀夫監督がイベントで言及。「僕はフィジカル育ちなので悲しい」と、データを所有できない時代への危機感を語る
- 7月9日:署名は24万件を突破(240,421件)。抗議はPS公式Xの周辺機器紹介や他社タイトルの投稿にまで波及
- 7月10日:パブリッシャーのAstrolabe Gamesが「AGO宣言」を発表。条件を満たす自社の新作全タイトルでPS5パッケージ版を出すと宣言し、廃止までに駆け込みでパッケージを残す姿勢を見せる

『メタルギア』のスネーク役声優デビッド・ヘイターさんまで「#NoDiscNOBUY」を投稿していて、業界を巻き込んだムーブメントになっているのが分かります。
反発側の言い分
署名ページやSNSの声を見ていくと、反発の論点は大きく4つです。
所有権の問題
一番の核心はここです。ダウンロード版の購入は、厳密には「所有」ではなく「アクセス権の取得」。ストアが閉じたら、購入したゲームがいつまで遊べるかの保証はありません。
「物理かデジタルかではなく所有権の問題だ」と指摘するブログが海外で大きな話題になったのも、この不安が広く共有されているからだと思います。
中古売買・貸し借り・コレクション
ディスクがなくなれば、クリア後に売る、友達に貸す、棚に並べて集める、といった遊び方が新作では一切できなくなります。
小売店・流通への打撃
署名活動を始めたのがゲーム小売店だったのは象徴的です。新品ソフト販売と中古の買い取り・販売で回ってきた業態には、直撃の話です。
販売経路がソニー一社に集約される
PS上ではソニー以外のデジタルストアが認められていないため、新作の販売経路が事実上ソニー一社に集約されることへの懸念も指摘されています。
でも、株価は上がった
これだけ燃えたなら、ソニーの株価は下がったのか?個人的にソニー株ホルダーとしても大注目のニュースだったので、こちらのニュースが出たときからの数日の動きをご説明します。
まず前提の整理から。SIEの発表が出たのは7月1日の夜(日本時間で21時ごろ)です。東京証券取引所の取引は15時30分に終わっているので、7月1日の終値3,250円(前日比-0.91%)には、発表はまだ織り込まれていません。
つまり、市場がこの発表に反応できた最初の日は翌7月2日。実際の値動きを見てみると、意外な結果でした。
- 発表後の初取引日となった7月2日は+2.46%(終値3,330円)。初動からプラスの反応
- そのまま上昇が続き、7月7日には終値3,502円と、発表前の終値(3,250円)から7%超の上昇
- その後7月8日〜9日はやや反落。それでも発表から1週間(5営業日目)の7月8日終値は3,468円で、発表前の終値3,250円から+6.7%の水準を保った

海外メディアには「プレイヤーが抗議する一方で株は上がった」と報じる向きもあります。
ただし同時期は日経平均も大きく上昇していました。市場全体が上げているなかでの上昇だった、という点は押さえておきたいところです。この発表が少なくともネガティブには受け取られなかった、というあたりが読み取れる範囲になります。
市場がそう受け取った背景には、数字の裏付けがあります。アナリストの分析によると、PS向けゲーム販売に占めるダウンロード版の割合は2013年の13%から、2025年には約80%まで拡大しているそうです。
この数字が出ている中で、物理ディスクの生産ライン・流通・在庫を維持し続けるのか。「変わる時期が来ていた」と市場が判断したのは、冷静に見れば自然なことなのかもしれません。
ゲーマー目線で見ると
僕はこれまでにゲームを2,260本以上買ってきたヘビーゲーマーです。そんないちゲーマーとしての視点から今回の発表を見ると、ちょっと違う景色が見えます。
ゲーマーには「発売から時間が経って値下がりした作品を、中古ディスクで安価で楽しむ」という購入の選択肢があります。出たばかりの新作は高くても、少し待てば手頃な値段で購入できる。準新作・旧作を集める上では、中古市場というのは大変貴重でありがたい存在です。
ここで、僕自身の購入記録を実際に数えてみました。世代ごとのパッケージ版とダウンロード版の割合です。
- PS3:パッケージ53% / DL47%(ほぼ半々)
- PS4:DL版85%
- PS5:DL版86%
見事なまでの移行っぷりでした。この数字には、そもそもパッケージ版が存在しないストア限定タイトルも含まれています。ただ、それこそが変化の本体で、パッケージ版の出ないゲームばかり買うようになったこと自体が、SIEの言う「購買トレンドの変化」が自分の購入記録にも表れているということだ思います。前の節で書いた業界全体のDL比率約80%も、僕の記録は上回っています。

それでも、パッケージ文化への愛着は別の話です。友達との貸し借りは学生時代よくやっていたし、それが可能だったからこそお小遣いの少ないあの時代でも共通の話題でコミュニケーションの輪が広がりました。また、店舗別特典を見比べる楽しさ、エディション違いでグッズが付いてくるワクワク、金額面でもパッケージ版は発売日でもAmazonなどで定価より少し安く買えることがあります。データ上で保有しているという記録だけではなく、物理的なパッケージ版とデータが入ったディスクを保有している感覚もやはり異なりますね。同じシリーズの作品がすべて棚に並んだ姿はコレクション欲をものすごく満たしてくれます。僕もその感じは大好きです。

廃止対象は2028年1月以降の新作のみではありますが、2028年以降の新作には今までパッケージ版があったことによる取り得た選択肢が最初から存在しなくなります。発売日にフルプライスで買うか、ストアのセールを待つか。その二択です(一部の作品は新作でもダウンロード版が少し安くなってたりという例外もありますが)。パッケージ版を買うという選択肢が消えるのは素直に寂しいポイントですし、これまで以上にセールを待つ人も多くなるんじゃないかな、と思うところです。

パッケージ版のゲームを買って、パッケージ裏や説明書を眺めてワクワクしていたあの気持ちは、今後の新作では味わえないのか…。でも最近(というか少し前から)はそもそも説明書がついてこないゲームがほとんどになってましたね…。
【2026年8月12日 追記】その後、ソニーの決算説明会でこのディスク生産終了について記者から質問が出て、CFOが回答しました。撤回を求める署名も36万筆を超えています。続きは次の回にまとめました。
結論:時代の流れとしてやむなし。ただし条件付きで
正直に結論を書くと、僕のスタンスは「時代の流れとしてやむなし」です。
ダウンロード比率が80%まで来ている以上、いつかは誰かがこの決断をした話だと思いますし、株式市場の反応も「何かを変えないといけない時期が来ていた」ことを示唆しているように見えます。
ただ、実際問題として今月、英国・欧州のPlayStationユーザーに「購入済みのStudioCanal配給映画・ドラマ551本を2026年9月1日以降ライブラリから削除する」という通知が届いたばかりです。返金・補償の案内はなく、対象には『ターミネーター2』などの著名作も含まれます(今回、日本は対象外です)。

2023年末にDiscovery系番組の一斉削除が予告されたときは、強い反発を受けて撤回された前例もあります。物理という逃げ道をユーザーから取り上げるなら、「買ったデジタル版が消えない保証」への手当はセットであるべきですし、ユーザーが声を上げることには実際に意味があるわけです。
購入済みタイトルの長期的なダウンロード保証、将来的には譲渡の仕組み。そこまで示して初めて、「デジタルへの完全移行」はユーザーに受け入れられるのだと思います。
反発の署名31万件は、撤回を勝ち取るためというより、この宿題をソニーに突きつけたものとして意味があるんじゃないでしょうか。

手持ちのディスクと中古の旧作は無傷。変わるのは2028年以降の新作だけ。あとは「買ったデジタル版が消えない保証」という宿題に、ソニーがどう答えるかですね。
これから新しくPS5を選ぶ人は、今のうちにパッケージ版が遊べるディスクドライブ搭載モデルを選んでおくのも一つの手だと思います。どのモデルを買うべきかは、値上げ後の「今買うべきPS5」を比較した記事で詳しく書いていますので、そちらもぜひご一読ください。
よくある質問
- Q手持ちのPS5ディスクは2028年以降も遊べる?
- A
遊べます。廃止対象は2028年1月以降に発売される新作のみで、SIEは「すでに発売済みのタイトルや、2028年1月より前にディスク版として発売されるタイトルには影響はありません」と明言しています。
- QPS6にはディスクドライブが付かないの?
- A
PS6についてはSIEから何も発表されていません。「標準モデルにはディスクドライブが搭載されないだろう」というのはアナリストの予測にすぎず、確定情報ではない点に注意してください。
- Q署名が集まればディスク廃止は撤回される?
- A
複数のアナリストは撤回の可能性は低いと見ています。「反発を受けて何らかの対応はあり得るが、方針の全面撤回は考えにくい」との見解が示されています。
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